16:(200205)
少聞多想/16:こんなこともあるさ
- 福島の実家に居た頃、よく父に言われて杉の下刈りをした。植林をして暫くは杉と言えども雑草より小さい。成長が速い雑草や雑木に生育負けてしまわないよう、杉の周りの雑草などを刈り取るのだ。杉が建材として使えるのは数十年先のことだから、目先のことばかり考えては出来ない気の長い話だ。
- 杉を植えたのは個人の家ばかりではなかった。数十ヘクタールに及ぶ国が所有する雑木の山を部落で借り受け、杉を植林して部落全体のために使おうというプロジュクトもあった。小学校には学校で管理する杉の山があり、消防団にも独自の杉山があった。雑草の伸びる時期、日曜の朝になると、下刈り作業をする人たちの乗ったバイクが実家の前を列をなして通った。
- 実家の杉山は下刈りをする必要がないほど大きくなり、建材に使えるほど大きく育った。しかし、父の思惑は大きく外れた。時代は変わった。外材が安価に入るし、山奥の杉は搬出するのにコストがかかり過ぎるのだ。私も兄弟も実家の杉を健在に使おうとはしない。私が下刈りをした杉は建材にもならず、春になると花粉症の元として嫌われているだけだ。
- 過ぎてしまった時間だからどうしようもないが、あの嫌々ながら働いた時間は何だったのだろう。長い時間が経過すれば、こんなこともあるさ、とも思う。(堀)

